愛毒が溶けたら

「でも、母さんに報告するのは兄貴も同じだろ。”子供嫌いを直しつつある”って。あと、可愛い後輩が出来そうだって、早く教えてやれよ」

『後輩って……。夏海くんは、まだ保育園児だからね?』



フフ、と笑みが零れる守人さん。その笑い声が、本当に嬉しそうに聞こえて……私は思わず「ありがとう」と呟いた。

すると、小さな私の声は聞こえなかったはずなのに。

守人さんは「冬音ちゃん、一緒にいるんでしょ?」と勇運くんに確認する。



「あぁ、隣にいる」

『じゃあ、伝えといて。僕はまだ、君を諦めないからねって』

「……じゃあ切るからな。もちろん、聞かなかったことにする」



すると「勇運のケチー!」という声と共に、電話は切れる。私は、ちょっとだけ守人さんの怒声が聞こえてしまって……「アハハ」と苦笑を浮かべた。
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