一つの夜が紡ぐ運命の恋物語を、あなたと
 病院を出ると、その足で区役所に向かい母子手帳をもらってから帰宅した。ワンルームの見慣れた部屋に入った途端に気が抜け、そのままベッドに倒れ込むように転がった。

 これからどうしよう……と不安に苛まれる。お金の心配がなければ大丈夫だなんて軽く考えていた。自分の願いなんて叶うわけがないと、心のどこかで思っていたのだろう。いざこの状況に置かれたとき、心配事が次々と浮かんでいた。

(周りにはいつ話そう?)

 今はまだ風邪らしき症状で誤魔化せているが、これから先、悪阻が悪化するかも知れない。そうなると周りに迷惑をかけることになってしまう。早く伝えたほうがいいと思うが、受け入れてもらえるか不安になってくる。
 園長はあと数年で定年退職という、物静かな優しい人だ。ただその性格は、理事長の理不尽な言動にノーと言えず、保育士の中にはそれに良い感情を抱いていないものがいるのは確かだ。
 
(とにかく、園長に話しておかないと……)

 そんなことを考えながらウトウトしていた由依は、そのまま重くなった瞼を閉じていた。
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