たゆたう、三角関係
私たちは壁を背もたれにしてベッドの上に並んで読み始めた。

課題とされているのは中盤に収められている表題作。

老いた猫とおじいさんの、どちらが早くこの世を去るか、おじいさんが一人でに賭けを始める物語。絶対に猫を看取ろう、と心に決めたものの、おじいさんの方が先に死にそうになり、何も資産もない中で遺書にただ猫のことを書き連ねる。「猫とお墓に入れてくれ」と。

隣からパラパラとページをめくる音がする。

なんとも眠くなる話。
私は昨日2時くらいに寝たこともあり、小説が退屈なこともあり、藤くんの肩にもたれるようにして目を瞑ってしまった。

ベッドの上でブブブ、ブブブ、とスマホが振動する音で目を覚ました。気付くと私はベッドの上で横に寝かせられていて、藤くんも私の背後で寝ていた。

「藤くん、藤くん、鳴ってるよ、スマホ」

その腕を軽く叩きながら言うと、反応悪く「ん?」と返ってきた。

ベッドの上を手で探るようにしてスマホを探し、画面を見ると「うわ」と呟きながら電話に出た。

「もしもし、うん、え、今日?今日何もないけど。今?今、家。うん。え、待って」

藤くんは話しながらチラリと私を見た。

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