五年の想いを抱えて

【7】

正面から歩いてくる、私の母校の制服を着た男子高校生。

どこで会ったかなどは全くわからないのに無性に懐かしさと愛しさを感じる。

「晴葵」

無意識に口から飛び出した名前は彼の歩みを止めた。

1メートルほどの距離で目が合った私たちは互いを見つめて動かない。

「…れ…い?」

彼も不思議そうな顔をして私の名前をつぶやいた。

彼が呼んだ私の名前は5年前の記憶とともに私の脳裏に入ってきた。
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