花橘の花嫁。〜香りに導かれし、ふたりの恋〜



「大きいだろう? 私も初めて来た時は驚いた」

「そうなんですね……え、あの長宗我部様はずっとこのお城にいたわけではないのですか?」

「あぁ。子供の時は、帝都にある邸に住んでいた。ここは、当主と当主が許した者にしか住めない決まりになっているから。私もまだ二年も住んでいない」


 そうなんだ……そういえばそれくらい前に新聞記事で【長宗我部家当主引退! ご子息に受け継がれる】みたいな内容で出ていた気がするし、綾様の代わりに女学校に行った時に生徒たちがご子息様の話に花を咲かせていたから。


「長宗我部様、私はここに入っても大丈夫なんでしょうか。ここはご当主の方が許したお方でないといけないのでしょう?」

「君のことはもう認めている。それに当主本人が連れてきたんだからいいに決まっている」


 そう長宗我部様は言って微笑まれるとお城の入り口へと歩き出した。私も一緒に歩き出し入り口の前では、洋装の旦那様より年上かなと思われる少しだけ白髪が目立つ男性が待っていた。

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