花橘の花嫁。〜香りに導かれし、ふたりの恋〜
第二章

◇長宗我部家



 長宗我部邸にやってきて数日。私のことをお世話してくださる春や花奈のおかげで毎日、穏やかに過ごしていた。


「紗梛様、今日は屋敷のお庭に行って見ませんか? お花がたくさん咲いてるんですよ」

「お花、ですか?」

「はい。元々は、先先代当主であられる祐壱(ゆういち)様……士貴様のお祖父様ですね。祐壱様がお花を鑑賞するのが好きで始められた庭園なんです。今は庭師がいてその方が管理してくださっているので綺麗なんですよ」


 そうなのか。もしかしてそこの窓から見えるお庭の一角にある整備されている場所かしら……


「行きたいです。お庭。お花も好きなんです」


 櫻月には花壇なんてなくて名前はわからないけど、小さい野花しかなかった。だけど、母が生きていた頃に二人で暮らしていた離れの裏側に小さくて白い可愛らしい花が咲いていてそれを母と見るのが好きだった。


「……そうなんですね! 良かった。じゃあ、準備をしましょうか。そうだわ! この洋装にしてみませんか?」

「ヨウソウ」


 その“ヨウソウ”が分からず顔を傾げる。すると、花奈さんが広げて見せてくれた。


「ワンピースというらしいんですけどね、まぁ見ただけじゃイメージができないと思うんで早速着てみましょうか」

「お、お願いします」



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