別居恋愛 ~もう一度恋からはじめよう~
「じゃあ、明日はちゃんと帰りな? で、やっぱり本人に聞いたほうがいいと思う」
「うん……でも、怖い」

 今の関係なら大丈夫なのかもしれない。それでも拓海が一度でもそういう選択を取ろうとしていた可能性があると思うだけで怖かった。再びそうなってしまうこともあり得ると思った。だから、瞳はどうしても恐怖心を消せないでいた。

「そりゃそうだよ。好きな人がそんなもの持ってたら怖いに決まってる。でも、黙ってたら絶対もっとつらいと思う」
「うん……」
「私も一緒に聞こうか? それなら少しはマシなんじゃない?」

 縋りつきたい気持ちでいっぱいだが、拓海とはちゃんと気持ちを伝え合うと約束しているのだから、二人きりで向き合わなければならないと瞳は思った。

「……ううん。一人で聞く。拓海と約束してるから。ちゃんとお互いの気持ちを言うようにするって」
「そっか。じゃあ、もしも何か困ったら連絡して? 私が助けに行くから」
「ふふ。頼もしい。ありがとう、芳恵」

 芳恵に優しく励まされたことで、瞳はなんとか正気を保っていられた。拓海に真実を聞く覚悟はまったくできていなかったが、それでもこんなふうに拓海を放って逃げるようなことはやめようと思った。
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