別居恋愛 ~もう一度恋からはじめよう~
 一晩眠れば少しは変わるかと思ったが、やはり翌日になっても、拓海に聞かなければという気持ちと聞くのが怖いという気持ちがせめぎ合って、瞳は拓海とろくに会話もできなかった。

 だから、拓海がまた瞳に心配の声をかけてきたのは必然だった。夕飯を終えたあとに、今日は逃がさないとばかりにしっかりと向かい合って座らされてしまった。

「瞳。やっぱり何かあるんだろ?」
「……」
「昨日からずっと元気ない。何があった? やっぱりどこか具合悪い?」
「違う……」

 その心配はかけたくなくて、瞳は大きく首を振って否定した。

「じゃあ、どうした? 何かつらいことあったか? ん?」
「……」
「頼む。頼むから教えてくれよ。心配なんだよ、本当に」

 言わなければ、聞かなければとそう思うほど言葉が詰まって出てこない。代わりに瞳からこぼれ出てきたのは大粒の涙だった。

「ふっ……うっ」
「瞳? どうしたんだよ? ん? 何がつらい?」
「うっ……くっ……」
「本当にどうしたんだよ。瞳」

 瞳を優しく抱きしめようとする拓海に、瞳は思わずびくついてしまった。この胸に本当に縋っていいのかという迷いがそうさせてしまった。

「……俺に触られるの嫌?」
「うっうぅ……ちがうっ……」
「手ならいい?」

 拓海は瞳の手を握ると優しく撫でさすってくれた。
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