別居恋愛 ~もう一度恋からはじめよう~

3. 約束の土曜日

 待ちに待った土曜日。玄関で顔を合わせた二人の間にはなんとも甘酸っぱい空気が流れていた。互いに意識しているのがわかる。その雰囲気に拓海はつい甘い言葉が口をついて出そうになったが、元気いっぱいな聖が割り込んできたことで、その言葉は外に出ることなく拓海の中に戻っていった。

「拓兄! あがって! 早く!」
「そう急かすな。すぐ行くから」

 聖の歓迎ぶりに、瞳と目を合わせて笑いを浮かべながら、拓海は家の中へと上がった。

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