月花は愛され咲き誇る
 せめて温かい飲み物でも飲めないかと周囲を見回していると、突然聞き慣れない声が掛けられた。

「……貴女は舞わないのですか?」
「え?」

 見ると、燦人のお付きの者である炯がそこにいた。
 火鬼の者は皆そうなのか、赤みを帯びた黒髪に黒い瞳をしている。まだ幼さは残るが、彼もかなり整った容姿をしていた。

「見たところ燦人様が指定した年齢に当てはまる様ですが……。失礼ですが、お年は?」
「あ、その……十八、です」

 無視するわけにもいかないし、嘘をついても失礼に当たる。
 何より、真っ直ぐな彼の瞳には嘘や誤魔化しが通用しない気がした。

「あ、ですが私はいいのです! 力も無いし……その、髪色だって変ですから……」
「変、ですか?」

 言いつけを破って叱られたくは無いので、香夜は舞わない理由もちゃんと告げた。
 だが、炯はその理由にも納得した様子は見られない。

「何をしているんだ!」

 そこへ、荒々しい声を上げながら長が近付いてくる。
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