月花は愛され咲き誇る
***
頑張った甲斐あってか、何とか昼食には間に合った。
だが、十分な量を食べられたかと言うと答えは否。
食事もほどほどに養母に呼び出されてしまったからだ。
「香夜です。お呼びと聞き参りました」
養母の部屋の前で襖越しに声を掛ける。
「入りなさい」
淡々とした声に香夜はしずしずと従った。
中に入り襖を閉めるとその場で居住まいを正す。
両親を亡くした香夜を引き取った養母は月鬼の長の妻でもある。
亡くなった母の友人だったとも聞いたが、引き取ってからの自分への仕打ちを考えるとよく思っていないのは確かだ。
もしかすると、母の命を奪って生き残ったと言われている自分を疎んじているのかもしれないと、ことあるごとに思っていた。
養母はそんな香夜が部屋に入るのを厭わしく思う人だ。近くにおいでとは絶対に言わない。
だからその場で声がかかるのを待っていたのだが……。
「何だい。もっと近くに来ないと用件も伝えられないだろう。来なさい」
座ったまま軽く振り返った養母は珍しく更に近くへ来いと指示を出す。
「は、はい」
頑張った甲斐あってか、何とか昼食には間に合った。
だが、十分な量を食べられたかと言うと答えは否。
食事もほどほどに養母に呼び出されてしまったからだ。
「香夜です。お呼びと聞き参りました」
養母の部屋の前で襖越しに声を掛ける。
「入りなさい」
淡々とした声に香夜はしずしずと従った。
中に入り襖を閉めるとその場で居住まいを正す。
両親を亡くした香夜を引き取った養母は月鬼の長の妻でもある。
亡くなった母の友人だったとも聞いたが、引き取ってからの自分への仕打ちを考えるとよく思っていないのは確かだ。
もしかすると、母の命を奪って生き残ったと言われている自分を疎んじているのかもしれないと、ことあるごとに思っていた。
養母はそんな香夜が部屋に入るのを厭わしく思う人だ。近くにおいでとは絶対に言わない。
だからその場で声がかかるのを待っていたのだが……。
「何だい。もっと近くに来ないと用件も伝えられないだろう。来なさい」
座ったまま軽く振り返った養母は珍しく更に近くへ来いと指示を出す。
「は、はい」