幽霊の依子さんは 今日も旦那様を愛す
1時間後。


姫川さんがパンパンになった買い物袋を持って帰ってきた。

「よいしょ」
ドサッ。

テーブルに置いた袋が重そうな音を立てた。

ゼリーやスポーツドリンク、フルーツ、缶詰め、冷却シートに氷枕。それと、タッパーが2つ。

何が入ってるのかしら?

姫川さんはタッパーのそこを触って、
「まだ熱いかな」
と呟くとその蓋を開けてテーブルに置いた。


横から覗くと中身はお粥と高野豆腐だった。



手作り。
美味しそうにできてる。



姫川さんは
「失礼します」
と呟いて、冷蔵庫をあけた。

フルーツやゼリーを冷蔵庫に片付けながら、
「ごめんなさい~。勝手に入れます~」
と呟く。

この子、誰に向かって言ってるのかしら?
私が見えてるわけでもないでしょうに。



「大路さ~ん、勝手に触ってごめんなさい~」
と呟きながらドアを閉めた。


あ。修平に言ってたの?
ははっ、聞こえないって!

あはははっ!
姫川さん、おもしろい!!


ふぅと溜め息をついた姫川さんを見て、いいこだなと微笑んだ。



それから彼女は寝室で眠る修平の氷枕を代えたり、スポーツドリンクを飲ませたり、着替えさせたりと、甲斐甲斐しく修平のお世話をしていた。
一晩中。
朝方になり、ベッドに寄りかかるように座って一息ついたと同時に眠ってしまった。


そんな姫川さんと熱が下がって穏やかな寝息をたてる修平を見下ろした。


修平がどんなに苦しくても、私には汗一つ拭くこともできない・・・。
姫川さんがいてくれて良かった・・・。

ありがとう、姫川さん・・・。




私は自分の頬を静かに伝う涙を拭ったーーー。

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