幽霊の依子さんは 今日も旦那様を愛す
一緒に大浜駅で降りた。
そこで初私は自己紹介をした。
「私、姫川弥生といいます」

初対面の人に名前を教えてしまった。
不用心だけれど、この人が優しい笑顔で笑うから、つい自分から名前を教えたくなった。
「ひめ・・・。ふふふふふ」
「姫じゃなくて姫川です。姫らしくないのは仕方なくないですか?」

子供の頃から似合わないと笑われてきたけれど、初対面で笑うとか失礼だと思う。
イラッとした私を見て、男の人は慌てた素振りをみせた。

そして、
「いやいや。申し訳ない。私は、大路修平といいます」
と自己紹介をした。

「え?」
「大きいの『おお』に道路の『ろ』で『おおじ』と読みます」

「えー!?本当に?」
「本当」

それにしても姫と王子・・・。と思ったら、
「姫と王子」
と大路さんが呟くから、私たちはまた笑った。


  ※※※

「それではお気をつけて」
「はい。大路さんも」


最寄り駅が同じとはいえ、また会えるとは限らない。
けれど・・・大路さんにまた会いたいなと思った。

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