課長のケーキは甘い包囲網

「……そうだったのか。それでお前が教えたのか?」

「ようやくさっき教えたよ。おそらく、人事総務の若い奴らは噂をうのみにしているかもしれないからな。彼女には真実を教えてやらないとお前が後々困るかもしれないと思ったんだよ。ああ、俺って親切だな」

「……なんだそれ」

「まあ、いいや。それより、今日来たのは話があったからなんだよ」

「なんだ?」

 声を小さくして春日は言う。

「実はさ、澄川にばったり会ったんだ。ツインスターホテルのカフェから出てきたんだ。びっくりして、確認したらどうやらあそこのパティシエになっていたらしい」

 俺は驚いて顔を上げた。有紀は退職してから全く連絡がない。俺はフラれたのだからしょうがないと思っていた。

「そうか……あいつ、元気だったのか?」

「……沢島。あれから全く連絡取れてなかったのか?」
< 105 / 292 >

この作品をシェア

pagetop