課長のケーキは甘い包囲網

「へええ、お前にしてはまともなこと言うじゃないか」

「だって、だって、無理言ったら嫌われちゃうよ……」

 お兄ちゃんは優しい目をして私の頭を撫でた。ぐしゃぐしゃって。懐かしい。

「可愛いこというようになったな。見た目も大人っぽくなった。これをあの御曹司が見たら余計お前と一緒になりたがるに違いない。ちょっと作戦を練った方がいいぞ。できるなら、その彼氏も力を借りるべきだな。縁談のはなしは彼にしているのか?」

「あ、うん。付き合う前にしてある。上京したときの条件とか……」

「ふーん。そいつ今日はどこにいるんだ?」

「実は実家に帰ってる。何か呼ばれて用があるんですって」

「そうか、タイミングが悪かったな。俺も夕方には新幹線に乗りたいんだ。このあと、今の師匠のお付き合いのある店へ行くんだ。勉強のためにな」

「そうだったんだ。ごめんね、時間大丈夫?」
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