課長のケーキは甘い包囲網

 お母さんが泊まるように勧めたが、彼が今日は急だったのでホテルへ泊まると言った。確かに何の用意もしていないので、そのほうがいいかもしれない。

 玄関へ彼を見送りに出て、タクシーを待っていた。

「誠司さん。アパート解約して同棲したいってまだ話してません」

「じゃあ、明日その話をしようか。料亭の料理を明日頂きたいから予約してくれよ」

「わかりました。昼は一杯かもしれないので、夜になるかもしれませんけど。そのほうがいいですかね?」

「任せるよ」

 タクシーが入ってきた。

「じゃあな、すみれ。おやすみ」

「おやすみなさい」

 彼と手を振って別れた。

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