美人な女子たちに溺愛されていて困っています。

詩(うた)

***

『おーい美咲。どうしたのー?』



「何よ。“詩” (うた)」



アタシが目を開けると、アタシの右に“詩”がいた。



“詩”はアタシとそっくりだけど、アタシより少し大人っぽい。



『あのさー、あたし川口の事ムカつくから泣かしていい? 美咲の身体(からだ)貸して』



「貸していいかは別として、駄目だよ、泣かすのなんて」



アタシが否定すると、“詩”の目つきが鋭く変わった。



『は? 泣かさなきゃこの計画が上手くいかねーの。大丈夫、川口と美咲、両方、身体(からだ)そのものは傷つけないから』



身体そのものって……、じゃあ心は傷つけるかもって事?



その心の声を見透かしたかのように、“詩”は言う。



『そ。じゃなきゃあたしの計画が上手く行かないの』



ダメだ。こうなった“詩”は誰にも止められない。



アタシは勘弁して折れた。



「はいはい分かったよー」



そう言って目を閉じた瞬間、アタシの身体は自分で自由に動かせなくなっていた。
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