【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく
 そう考えると、これからますます王宮を出ずらくなりそう。
 得難い忠告に感謝し、私は黙って頭を下げた。でも、彼女の話はこれが本題では無かったようだ。
 
「さて、そんなあんたに一つ話がある」
「はい、なんでしょう」

 プリシラさんは真剣な表情をしたまま、私の顔を真っ直ぐに見た。
 どうやら悪い人ではないみたいだし、私はきちんと話を聞くべく姿勢を正す。

 そして、彼女の口が開き――その言葉に私は唖然とする。

「あんた、あたしと組んで陽炎草を大量生産するつもりはないかい?」
「…………えっ」
 
 しばらくの沈黙の後、彼女がその睫毛の長い瞳をウインクさせて言った言葉は、私の頭を大いに混乱させた。

「場所はあたしが提供する。だからあんたとあたしでこの国で、ジュデット産の陽炎草を作らないかって言ってるんだよ!」
(今の話の流れから、どうしてそうなっちゃうの――!)
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