【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく

24.元大聖女、断る

「お断りします!」
「まあ、待ちな」

 この国にて陽炎草を大量生産する――そんな提案を聞いた瞬間、私はろくな話じゃないと立ち上がろうとした。しかしこちらの肩を院長は強引に押さえつけてくる。結構なお年の割に有無を言わさぬ物凄い力だ。

「早とちりもいいところだ。何も金儲けしようってんじゃない」
「じゃあどういう魂胆があるんですかっ!」
「新しい薬の開発をしようと思ってる」
「どうせそれもお金の為なんでしょ……っ!?」
「黙りな。まずは話を聞け……!」

 さすが国有数の大病院の経営者。彼女はぴしゃりと一喝すると、セットで獰猛な威圧感を醸し出し、身体を委縮させた私は一旦腰を下ろさざるを得ない。

「まあ、結果的に幾ばくかの儲けは期待しちゃいるが、それでも半分以上は道楽みたいなもんさ。ある魔族固有の症状で、不治の病とされているものがあってね。その治療薬を作りたい」
「……どういう病気なんです」
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