【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく
「え……」
 
 実は《白肌病》という病名を聞いて、話を聞く前から、私の頭にはある人物の姿が浮かんでいた。そしてプリシラ院長が告げた名前はその想像が正しいことを肯定してしまう。

「やっぱり、ベッカーはあんたには話してなかったんだね。ローエンの坊やの態度からそんな気はしてたけど……」
「ベッカーが、病気……」

 それからは、しばらく言葉が出せなかった。

 私は彼の容姿は魔族特有のものだと勝手に勘違いしていたのだ。
 それに、彼はそんな素振り一度も見せず、いつも偉そうで元気に私に接してくれた。それが治らない病で苦しんでいるなんて、信じられない。

 でも一方で……彼の行動の端々が蘇る。冗談めかしてカトラリーより重いものは持ちたくないとか言ったり。他にも休憩中はずっと寝ていたり、激しい運動をするのをほとんど見たことがなかった。
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