【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく
 これも医療に携わる者としての本能か。知らない症状があるとつい気になってしまうのは私の悪い性だ。つい自分から話に乗りだし、院長はニヤリと口元を曲げる。

「《白肌病》っていうのがあってね。髪や肌がどんどん白くなっちまう病気さ。それだけなら命に関わることは無いが、患者には深刻な体力低下がつきまとう。それに伴う免疫なんかの低下も厄介だね。唯一の救いは、症状の発生数がそれほど多くないことかね」

 症例が少なく直接命に関わることは無い、ということは確かに一般的ではない病気で、治そうとするのは金銭目的ではないのだろう。それならば陽炎草を直接売った方が手っ取り早いし……セーウェルト側の目をいかに掻い潜るかという手間はあるにしても。

 となると名誉欲? そうも思うが、彼女は既に立派な立場を手にしている。私の身を案じて忠告してくれた件も鑑みて、そういった交渉を発する人物でもないように感じた。

「なら、どうしてその薬を作ろうと思ったのか理由を聞かせてもらえますか?」
「いいだろう。あたしの口から言うのもなんだが……あんたの知り合いにも関係することだからね」
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