【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく
 さて、何があったかをエルシアからは概ね聞いているが……あえてここは少し、何も知らぬ振りをして突いてみようか。

「一体、外出した日に何があったのです?」
「……言いたくない」
「なれば、会って話してみればよろしいではありませんか」
「それが出来れば苦労はしないよ」

 おやおや……顔を背けてしまった。
 こんな子供っぽい殿下の姿はここ数年では一度も見かけなかったというのに。
 やはり、エルシアとの出会いが殿下に何らかの変化をもたらしているようだ。

 このままエルシアがこの国に留まってくれたら、きっと殿下は喜ぶだろう。
 国王御夫妻や王女、城にも心強く思う人が沢山いるはずだ。
 そうした思いは、日に日に強くなってゆくだろう。しかしそれはやがていつか、争いの火種を生む。

 エルシアが誰かと結ばれ、子を為したいと願う時。誰かのために陽炎草を欲した時。必ずいつかそれは、ジュデットとセーウェルト王国の開戦の狼煙となる。それをエルシアは決して望むまい。
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