【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく
 淡い金髪を背に流し、女性と見まごう繊弱さのレセル様と、黒髪で妖しい魅力のあるクリスフェルト殿下が二人並ぶと、なぜだかとても絵になって見える。

「お目にかかれて光栄だ。ですが確か、あまりお体が強くないとお聞きしていたのだが」
「ある年齢までは。実は私もエルシア殿のお世話になった一人なのですよ」

 私は彼の立派な立ち姿を見て安堵していた。
 数年前の出来事は記憶に新しいが、今ではすっかり血色も良くなり健康そうだ。

「おかげさまで身体も随分丈夫になり、国内外の出来事に目を向けられるようになりました。そして多くの臣下たちが、セーウェルトの現状を憂慮していることに気付いたのです」

 レセル様は言う。セーウェルト王国は、今までも陽炎草や独占している他の資源を引き換えに、自国ばかりが有利な交渉を他国に度々強いてきた。そのおかげで大陸で一二を争う富裕国にはなれたものの、今もそうした国々からは好い印象を持たれていない。そしてそうした資源も、技術の革新によって代替物が生じることで、わずかずつではあるが価値を落としているのだと。
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