【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく
 そこで白髪の彼が苦々しい様子で、美青年にこそこそ耳打ちする。

(……いいのですか殿下? こやつの身柄は、お父上の病を治す薬をセーウェルト王国に求める取引に使えるやも――)
(止めてくれ。恩人に対してそんな卑怯なことはしたくないんだ)

 白髪の青年はなにやら大袈裟にため息を吐く。
 そしてこちらを向き、やっと彼らが何者であるかを告げた。

「女よ、謹んで聞くがよい。ここにおわす御方はジュデット第十八代目国王ベルケンド・アルヴェ・ナムス・ジュデット陛下の第一子、クリスフェルト殿下にあらせられる。お会いできたことを光栄に思うがよい」
(へいっ……でんっ……!?)

 目の前の、私を助けてくれた彼が、魔族の国の次期最高権力者であるという事実。それが、ががぁんと……私の脳を殴りつけるような衝撃をもって揺らした。
< 45 / 471 >

この作品をシェア

pagetop