【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく
「か、顔をあげてくれないか。そんなことをさせるためにここに連れて来たんじゃない」

 作法的にどこかよろしくないとかではなく、どうもあんまり人に傅かれるのを好ましく思っていないような感じだ。そうした困った顔を見ていると、美しい顔が途端に親しみやすく見えるのが不思議だった。

 そして一方で白髪の男性はそれが正しいというようにうんうんと頷くと、次いで自身を紹介してくる。

「いやいや殿下、他国の王族に礼を尽くすのは当然のことですぞ。ちなみに娘よ、私はジュデットの宮廷医師ベッカー・ランバルダートという。お前を助けたのは殿下だが、手当てしたのは私なのだ。感謝せよ」

 こちらの医師ベッカーの態度の方が王太子殿下よりよっぽど偉そう。

 それはそうと私の頭をある疑問が包む。
 そういえば、どうやって私の体を遠くの魔族の国まで移動させたのだろう。

 隣国といえどあの場所からジュデットへは、馬車でも一週間以上はかかるはず。
 しかも、西部の抗争中の地域を抜けなければならない。馬車に乗せて移動させたとしても、流石にそこまで検閲をスルー出来るほど、セーウェルトの警備兵もザルではない。
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