記憶をなくした海
提案
「ねぇ、前から思ってたことがあるの」

付き合ってもう3年目になる彼・諒の運転する車の助手席で、私は呟いた。

「なに?」

「諒、最近よく結婚の話するじゃない?」

「もう3年目だし、寧々も社会人になったからなぁ」

私は、見慣れたその横顔をチラリと見遣ったあと、

「諒には、後悔してほしくないのよ。まぁ、私もだからお互い様だけど」

「ん?」

「ほら…私たちって、19で知り合って、ハタチから付き合い始めて、かなり遅咲きというか…何もかも、お互いしか知らないじゃない?諒が浮気してない前提で言うと、だけどね」
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