記憶をなくした海
少しだけ怒気を含んだ声で彼が言う。

「わかってる。諒がそんな人じゃないことぐらい。だからこそ、提案したいのよ」

「話が見えてこないな…」

これを言うのは、少し勇気が要ったが、

「私たち、独身の間は、オープンリレーションシップで居ない?結婚するまでの期間限定で」

そう告げると、諒はよくわからない様子だ。

「どういう意味?」

「本命として付き合いながら、お互いに他の人とも関係を持つ、ってこと」

再度、彼の横顔を見遣ると、複雑な表情をしている。

「何でそんなこと…?」

「結婚してから他の人と関係持ったら、それはもう法的にもアウトでしょう?不倫だなんだってことだけは避けたいの」
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