忘れられないよ君は―初恋だけでは終われない―
 ある日。

 亜美のバイトが終わる頃。

 丈は少し離れた場所にいた。

 バイト先の前ではない。

 道の向こう。

 亜美からは見えない場所。

 建物から人が出てくる。

 その中に。

 亜美がいた。

「…………」

 丈は足を止めた。

 亜美は俯いたまま歩いている。

 手にはスマートフォン。

 画面を見て。

 閉じて。

 少し歩いて。

 また見る。

 丈のスマートフォンが震えた。

 画面を見る。

『先生

少しだけでいいので

話せませんか』

「…………」

 丈は顔を上げた。

 向こうに亜美がいる。

 歩けば。

 すぐに会える距離。

 声をかけることもできる。

 電話をすれば。

 亜美はきっとすぐに出る。

 それでも。

 丈は動かなかった。

 亜美が駅の方へ歩いていく。

 小さくなって。

 やがて。

 見えなくなった。

「…………」

 丈はもう一度、メッセージを見る。

 返信欄には触れず。

 画面を閉じた。

 そして。

 亜美とは反対の方向へ歩き出した。
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