忘れられないよ君は―初恋だけでは終われない―
「何かあった?」

 亜美は丈を見た。

「…………」

 何か。

 何かあったから、呼んだんだっけ。

 少し考える。

 でも、出てこない。

 違う。

 今日は。

 先生に会いたかっただけ。

「何もないです」

「何も?」

「……はい」

 丈が少し黙った。

「じゃあ、なんで呼んだの?」

「…………」

 昨日からずっと丈を探していた。

 返事を待って。

 大学でも探して。

 塾でも待った。

 ただ。

 会いたくて。

「先生に……」

「うん」

「会いたかったから」

 言った途端、頬が熱くなった。

「それだけ?」

「……はい」

 小さく頷く。

「それだけです」

 丈は何も言わなかった。

「……だめでしたか」

「何が?」

「何もないのに、呼んで」

「なんで?」

「…………」

「会いたかったんだろ?」

「……はい」

「じゃあ、いいんじゃない」

 亜美は丈を見た。

 怒っていない。

 帰れとも言わない。

 よかった。

 会いに来てくれた。

 それだけでよかった。
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