佐藤 しおりの幸せ探し〜揺れる恋
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佐藤 しおりは携帯ショップでチーフとして働いている。本来なら、本日は、副店長が責任者として業務に携わるのだが、流行のウイルス風邪にかかり、しばらく出勤できなくなる。そうなると今日の社員の中で立場上、一番上に位置するしおりは、予定外の業務が重なり普段以上に忙しい日となった。

そんな日に限って、閉店30分前になって予約もなく飛び込みで来店したお客様の応対に時間がかかり、帰宅時間を2時間も過ぎてしまっていた。

9時を過ぎて、今更、ご飯を作る気力はなく、簡単に済まそうとコンビニに寄ったが、タイミング悪く、入荷前の棚はガランとしている。

数種類のおにぎりしかなく、どれにしようと悩んでいると、横から手が伸びて来て、驚く。

(あっ、海老マヨ)

目の前で一個しかなかった海老マヨが奪われたのだ。そして、その人は、惣菜コーナーへ行ってしまう。

今日の運の無さを痛感して、先に取らなかった自分が悪いと、残っている中から、おかかを選びカゴに入れた。既に選んでいた和風ポテトサラダと、缶チューハイを持ってお会計に。

小高い丘の上に建つマンションに帰る為、しおりは、疲れた体を鼓舞して住宅街地内の長い階段を登っていく。
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