佐藤 しおりの幸せ探し〜揺れる恋
12

零士との恋人関係が良好なしおりは、毎日が充実していた。

待つだけの女だったしおりに、本来の恋人とはこうあるべきだと知らしめてくれる零士は、毎日、互いの部屋を行き来して、抱き合うだけが恋人ではないのだと教えてくれる。

帰宅時間が合えば待ち合わせして帰る日もあれば、休日は、迎えに来たりとしてくれる零士。

最近では、料理というものを覚えだした零士の元に帰るしおりだった。

「ただいま」

「おかえり」

「零士もおかえりなさい」

「ただいま」

しおりの腰を抱いた零士は、チュッとしおりのおでこに愛情を示す。

しおりも、零士の胸に抱きついて愛情表現をするのだ。

「いい匂い。今日は、カレー作ったの?」

「市販のルーだけどな」

「作ってくれてありがとう」

料理などしなかった零士の変わりように、しおりは感謝して、毎回、お礼を伝える。

「うまくできたか自信ないけど、食べるか」

「うん。食べる」

男飯らしく、食材は大胆な大きさである。

「いただきます」

相変わらず、しおりが髪をまとめて、気持ちよく食べる姿に零士は見惚れる。

「…うん、美味しいよ」

「よかった。まだ、野菜剥いて煮込む料理しかできないけどな」

「…十分だよ。零士が作ってくれるのは嬉しいけど、私の立場が…朝食しか作ってあげれないんだよ」
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