佐藤 しおりの幸せ探し〜揺れる恋

「お前という奴は…開き直って。会長づてできた話だ。今更、なかったことにはできない。はぁっ…とりあえず、見合いしろ。兄さんの顔を潰すなよ」

もう、話すことはないと、手で追い払われる零士だった。

朝から苛立ちだけが残る叔父との会話に、思わず、そこにある自販機に八つ当たりをして、ドンと叩いていた。

「おい、おい。自販機が壊れるだろ」

そこにいたのは、缶コーヒーを買いに来ていた加賀だった。

「朝から荒れてるな」

「はあっ、見合い話でウンザリだよ」

「相手は、あの女か?」

「多分な。念の為、しおりに人つけておいて」

「あぁ」

加賀の家は戦後の荒れた時代に、金持ち向けに今の組織の基盤となる警ら隊を作り、現在は、そこそこ名の知れた警備会社まで大きくなったのも、加賀家は、東雲 零治郎に取り入り、芝園グループの警備会社として数十年前から雇用されたからだ。

東雲をバックに持ち、これから更に大きくなっていくだろう。

そして大地は、表向きは銀行員として働いているが、本来の業務は万が一に備えるカモフラージュした特殊警備員なのだ。

もし、西城 麗香が零士のお見合い相手なら、しおりの身辺は危ぶまれる可能性がある。

甘やかされて育ったお嬢様は何をしでかすかわからない女なのだ。

用心に越したことはないと互いに意思を確かめる2人だった。
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