佐藤 しおりの幸せ探し〜揺れる恋
自分とは違う熱に、逃げようと抵抗するが強く抱きしめられていて逃げようがない。
「…やっ…やめて…んっ、あぁ…」
角度を変えて唇にキスをしてくる東雲が、しおりの唇を甘く喰んで、宥めるように背を撫で艶めかしく触りだし拘束を緩めていた。
辰巳とは違う唇なのに、東雲はキスがうまく、しおりは夢中になりそうになっていたが、背を艶めかしく撫でる手で我に返り、東雲の頬を引っ叩いた。
パチンとこ気味いい音が響く。
「何するのよ」
叩かれた頬を摩りながら、笑う東雲。
「つい、しおりちゃんにキスしたくなって」
「つい?サイテー」
玄関に掛けていくしおりは、靴を履いてドアを勢いよく閉め出ていった。
残された零士は、顔を覆いしゃがむ。
「マジかよ。仕方ないだろ。可愛いと思ったんだから」
自分に言い訳する零士だった。
その頃、しおりは、自分の部屋の玄関内で、キスされた唇を手のひらで覆う。
(どうして、もっと抵抗しなかったの)
そう、強く抱きしめられていたが、手は胸の中で、動かせたのだ。現に、東雲の頬を引っ叩くこともできた。
唇に残る熱に、しおりは戸惑うのだ。
なぜか、言葉と裏腹に東雲とのキスに嫌悪感はなかったからだった。