佐藤 しおりの幸せ探し〜揺れる恋
もちろん、彼女なりに冷やして出勤してきたのだろうが、まだ、腫れぼったい。
「どうしたの、その目?」
「しおりさん…うわーん、ぐす、グズ」
鼻水を垂らして泣きだし、始業前とはいえ、困ったしおりは、他のスタッフに清掃を任せてて、香織を落ち着かせる為に休憩室で休ませることに。
冷凍庫にあるアイスノンで目を冷やしてやる。
「ほら、泣かない」
「しおりさん、彼氏が二股かけてたんです。酷くないですか?」
「クズだね。そんな男と別れたんでしょ?」
自分だったら、別れられただろうかと思いながらも、香織の背をさする。
「向こうから振られたんです。悔しくて悔しくて…」
「それは悔しかったね。香織は可愛いよ。空気読めないけど、そんな香織をいいって言ってくれる男が、必ずいるから、そんな男忘れて、次行こう」
「次ありますか?ほとんど女ばかりの職場でお客様なんて、ほとんど老人ばかりなんですよ」
「あるよ。出会う時に出会うから、ね!まだ若いんだから、諦めないの」
「ですよね。あんな男と別れて正解でした」
吹っ切った表情で接客する香織に、しおりは、ホールをまかせ先に休憩に入ることにした。冷蔵庫に入れておいたドリンクに書かれた東雲の絵が上達しているのでクスリと笑ってしまった。