佐藤 しおりの幸せ探し〜揺れる恋

「警戒しすぎ。まだまだ序の口だからな」

腹黒く、笑うのだった。

どこからどこまでが零士の計画通りだったのだろう。

前の男、辰巳がいたのは想定外だったが、そのおかげで恋人ごっこまで取り付けた。

しおりとキスした唇をなぞり、柔らかな唇を思いだす。

ドアの向こうにいるしおりに向けて、心の中で宣言する零士。

(手加減なんてしない。ガンガン攻めるからな)

しおりはというと、鍵を閉めて、そこでしゃがみ頭を抱えていた。

「なにしてるの、わたし」

香織には、この短期間で、零士に乗り換えるのは、失礼だといいながら、この為体…

零士とのキスが嫌じゃないのが問題だと、ため息を吐き、そして、キスされた唇を指先でなぞるしおり。

ごっことはいえ、流されてキスまでしてしまった自分の浅はかさは、寂しい心の隙間にするりと入ってきた零士の優しさのせいだと、自分自身に言い訳するのだ。

携帯の画面を開いて、そこに辰巳とのやり取りした内容が残っていない現実。

思い出がありすぎて、なかなか消せなかったが、これで、吹っ切れると零士に感謝するのだ。

ごっことはいえ、零士と付き合うのだから、前を見ていこうと唇にぎゅっと力を入れて決意するのだ。
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