佐藤 しおりの幸せ探し〜揺れる恋

歩きながら食べるには人混みがあり、店同士の間の脇道に避難する。

フーフーとして、食べようとするしおり。

それを見ていた零士は、口を開けた。

「なに?」

「さっきみたいに食べさせて、ほら」

「自分で食べなさいよ」

そう言いつつ、零士の口の中に饅頭をちぎって食べさせるのだが、しおりの指にまで食いついてくるので、唖然となるしおり。

「ちょ、っと。指まで食べないでよ」

しおりの手首を掴み、舌で指先を舐め上げ視線を絡めてくる零士の目は熱を孕んでいて、指先に性感帯なんてあると知らなかったしおりの体は、甘い疼きに侵される。

視界にある淫らな行為に耐えられなくなり、零士を止めようと囁くのだ。

『私達、まだ恋人ごっこよ』

小声で囁くしおりの耳元に顔を寄せて、零士は掠れた上擦った声で囁くのだ。

『あんなキスしておいて、ごっこで満足できるのか?』

脳髄から腰にまで響く声に、しおりはゾクリと震える。

『俺はあれ以上のキスもしたいし、もっと触れ合いたい。我慢の限界がきてるって知ってよ』

『待つって言ったのに…』

『待ってるだろ。強引に抱かない、ただ、少しの触れ合いに進めてもいいだろ』
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