麗矢様のナイショの溺愛

* * *


「俺、響のことが好きだ」


 空が茜色に染まりつつあるころ、帰ってきたと思えば、麗矢様は真剣な表情で伝えてきた。


 あまりにも唐突で、一瞬、彼がなにを言っているのかわからなかった。


「……どんな罰ゲームですか」


 麗矢様はまた、落ち込んで見せる。


 その表情は、私が虐めているような気分になってしまうから、辞めてほしい。


「違う……違うんだよ、響……俺は、本気で響のこと」


 麗矢様の顔が上がり、そのつらそうな瞳から、逃げられない。


 どんな反応をするのが正しいのかわからなくて、私は固まってしまった。


 それに気付いて、麗矢様は口を噤ぎ、視線を落とした。


 その横顔を見るに、さっきの言葉は本当だったのかもしれないと思った。


 罰ゲームだなんて、悪いことを言ったかもしれない。


「……仮に、麗矢様が言うことが本気だとして。私みたいな雇われの身の庶民と、跡取り息子様が結ばれるなんて、ありえないでしょう」
「じゃあ、響は俺が東雲家の跡取りじゃなかったら、恋愛してくれる?」


 正気かと疑ってしまう発言だった。


 でも、それが本気だと、もう顔を見ればわかる。


 ただ、どう答えればいいのかはわからなかった。


「……ごめん、変なこと言った。でも、チャンスがほしい。一回でいいから、俺とデートして?」


 その提案に、私は頷くことしかできなかった。
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