麗矢様のナイショの溺愛

* * *


 響に渡したのは、響のかっこ良さをより引き立てる服。


 今着ていたのだってもちろんよかったけど、やっぱり、男の視線が響に集まるのは、嫌だった。


「……レイ」


 次の服を選んでいると、試着室のほうから、遠慮気味に呼ばれた。


 振り向くと、響はカーテンに隠れようとしながらも、その姿を見せてくれる。


 仕草と服の雰囲気がちぐはぐで、でもそれがよかった。


 ああ、響が欲しい。


 俺のものになって欲しい。


「うん、似合ってる」


 そんな重い感情を、伝える勇気がなかった。


 あの日のような拒絶反応をまたされると、心が折れて仕方ないから。


「それ、プレゼントさせて」
「え? いや、困ります」


 自然と、敬語が戻ってきた。


 きっと、本気で困ってしまうんだろうな。


 響は、困り眉で俺を見ている。


 なんて可愛いんだろう。


 もっと、俺に振り回されてよ。


「すみません、これ着ていきます」


 俺は戸惑う響に気付かないフリをして、店員に声をかける。


「……なんか、慣れてる」


 響の独り言を、俺は聞いてしまった。


 視界の端にいる響は、頬を膨らませているように見える。


 ねえ響、俺、少しは自惚れていい?
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