だって、しょうがない
 自分の中で、何かが壊れて行く。

 私、こんな執念深い嫌な女じゃなかったのに……。

 スマホの画面に映る楽しそうな人達、クランチアーモンドチョコフラペチーノのインスト映えショットを見つめていると、浮気をされて深夜にコソコソと浮気の証拠を探している自分の姿があまりにもみじめだと思った。虚しさで心がひび割れていく。

 淳の何が好きだったかも、今となっては思い出せない。私の7年間を返して欲しい。もう、何もかも捨てて何処かに逃げ出したい。
 淳の事も実家の事もみんな捨て去って、知らない土地で一人暮らしが出来るなら、どんなにいいだろう。
 どこか、海の見える街に暮らして、小さなアパートで一人暮らしをする。誰にも煩わされることなく、自由気ままな生活をしてみたい。

 実際には仕事もあるし、実家の件もある、無理なのは百も承知だ。でも、今はバカな妄想でもしていなければ、壊れそうな気がした。

 はぁーっと、大きくため息を吐き、スマホのスクロールを続けた。すると、ある写真の左隅に映っているスマホの機種がtuyokuで色がグリーン、淳の持っている物と同じなのを発見した。
tuyokuはガテン系には人気だけれど、一般ウケとは違うタイプの機種だ。
 クランチアーモンドチョコフラペチーノとtuyokuという二つの符号は、あまり重ならない気がする。これは、いわゆる浮気相手の”におわせ”なのかもしれない。

 自分の捨てアカウントを作り、浮気相手らしきアカウントの登録名”A”へ友達申請をした。

──これで監視することが出来る……。
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