願わくば、再びあなた様と熱い口づけを。

葵「異国の血をひく稀有女」

私がこの世界に売られてきたのはまだ数えて六つの歳になったばかりの頃でした。


私の母親は他国からやってきた男と出会い、そして恋に落ち、私を孕みました。


しかしあっという間に男は国へ帰り、母は小さな私の手を引いて田舎へ引っ込んでいきます。


そこで小作農を営む男と再婚をし、毎日痩せた田畑を耕していました。


耕せど耕せど痩せた土地では私を養えるほどの稼ぎにはありつけず、母は泣く泣く私の手を離します。


私がたどり着いた先は一度入れば外へと出る自由を奪われる世界でした。


一見華やかなその場所は泥に囲まれた牢獄のようで、女が心と体をすり減らすことで繁栄している場所でした。



彼と出会ったのは売られた先である遊郭でした。



私の値が決まり、そして遊女としての人生が始まろうとしていたその時、彼は私の目の前に現れました。



主に殴られ、床に叩きつけられ、口端から血を流し、主を睨みつける幼い下男……それが私の愛した男・十五(とおご)でした。

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