【番外編】花火大会の記憶 ー星空の下、キミとの約束。
「菜摘?食べないの?」


気付けば届いていたスイーツに、私は慌ててフォークを突き刺す。

その勢いに、シュンくんは可笑しそうに笑った。


「えっ、美味しい!」


少しの酸味とたくさんの甘さが広がって、私は頬を緩める。

シュンくんは、私のその表情を満足げに眺めてから、自分のパフェに口を付けた。


「うま、やっぱここのフルーツ当たりだ」

「だね!!」


テンションが上がって思わず子供っぽくはしゃいでしまう。

少しして恥ずかしくなり、静かに残りのタルトを食べ始めた私を見て、シュンくんは静かに笑みを零した。


「菜摘のおかげでここ来れて良かったよ」


さらっとそんな言葉を口にするシュンくんに、私はため息を吐く。


病院へ送迎したお礼に寄り道に付き合ってほしいと言いながら、シュンくんが連れて行ってくれる先は、いつも、私が好きなおしゃれなカフェや、美味しい食べ物が食べられる場所。

さらっと口にする、かっこいい言葉も含め、

きっと、意識していなかったとしても、意識してしまうはず。

そんなんだから、既にシュンくんを意識してしまっている私には、ドキドキするには当然のことで…。


なのに、きっとシュンくんは私のことを妹としか見てくれていない。

なんだって自然にこなして、いつでも爽やかな笑顔をうかべる彼からは、そんな現実が伝わってきて、切ないような気持ちになった。
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