【完全版】俺様幼馴染の溺愛包囲網
「ただいま〜」

 自宅のリビングのドアを開けて中に入ると、揚げ物の匂いが漂う。

「おう! お疲れさん!」

 ダイニングテーブルの定位置に座りごく普通に夕食を食べるこの男は、隣の家に住む藤田家の末っ子、藤田亮平(ふじたりょうへい)だ。
 私の同級生で、生まれた時からの付き合い。185㎝の長身に、塩顔の精悍な面立ち。現在、大学附属病院の小児科で研修医として勤務する新人ドクターだ。
 モテる要素しかないのだが、ある理由により彼女はいない。

「亮平……帰ってたんだ」
「おう! おばさんの天ぷら、サイッコーに旨いぞ」

 お前も早く食え! と、まるで自分の手柄のように言う。上機嫌だな。
 食卓の上を見ると、今夜のメニューは揚げたての天ぷらと冷やし素麺のセットらしい。
 助かった……。暑さにやられている私に天ぷらはキツい。素麺だけいただこう。

「先にシャワーに行ってくるわ。汗を流さないと、食べる気しない……」
「脱衣室、クーラー付けてるわよ」

 母、なんて気が利くんだ! ありがたい!
 私はウキウキしながら、お風呂場へ向かおうとした。

「最高だったぞ。涼しい脱衣室からの熱いシャワー。お前も早く行ってこい」
「……」

 うちで先に浴びたのか……まあ、いつものことだ。
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