【完全版】俺様幼馴染の溺愛包囲網
 熱いシャワーを浴び終えてダイニングに戻ると、亮平はまだ天ぷらを食べていた。

「はぁ……疲れたー……」

 目の前に置かれた麦茶を一気飲みし、やっと落ち着いた。
 さて、素麺だ。

「お母さん、大葉とササミだけでいいよ。天ぷらはちょっと……暑さで食欲ないの」
「え、揚げちゃったわよ」

食べないつもり? と母が睨む。

「あ、おばさん、それ俺が食う!」
「そう?」

亮ちゃんは育ち盛りだものねぇ。と、すぐご機嫌になる母。いつものことだけど亮平の母扱いは抜かりがない。

「あ、そうだ。地酒、途中のドライブインで買ったの。お母さん冷やしといて」

「あら、お父さん喜ぶわ〜。亮ちゃんも飲むわよね?」

いや、それは父が拗ねるから!

「お父さんすぐ拗ねるからちゃんと亮平のは別で買ったよ。2つ入ってるでしょ? 光太郎には地ビール。週末、帰ってくるんでしょう?」

 3歳年下の弟、枚岡光太郎は地元の国立大学の歯学部に通っている。今は大学の近くに一人暮らしの身だ。
 私の父は枚岡歯科医院の二代目で母は歯科衛生士だ。光太郎はいずれ、その歯科医院を継ぐ予定だ。

「おばさん、俺のも冷やしといて。後で飲みたい!」
「頂き物の水なすがあるのよ。切っとくわ」
 
 ホント、亮平には至れり尽くせりだな。
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