【完全版】俺様幼馴染の溺愛包囲網
 聖くんは私の2つ上の先輩で、私が幼稚園の年少の時年長さんだった。かれこれ20年以上の付き合いになる。さっきのはそういう意味だ。
 
 私の父がこの小学校の歯科検診を一手に引き受けている校医の枚岡先生。
 母は虫歯ゼロ週間の歯磨き指導をしている麻衣子先生。
 私は保健室の結衣子先生。
 だから子供達だけでなく先生方からも、私は結衣子先生と呼ばれている。

 小学校時代、いつも私と光太郎は保健室で母の仕事が終わるのを待っていた。それが今の仕事に繋がっている。『保健室の先生』に憧れて養護教諭の資格を取ったのだ。

 そして小さい頃からずっとお世話になっていた前任の前川先生が定年退職されたタイミングで私が大学を卒業。
 前川先生は後任に私を指名してくださった。有り難いお話だった。

 サマーキャンプや修学旅行の同行時には、今でも前川先生が代理をしてくださる。まだまだお元気で、ずっとていてくれたらいいのにと思う。

 少なめのサンドウィッチとおにぎりを食べて、私もコーヒーを入れる。朝からずっとエアコンが効いた部屋にいるからホットにしよう。

「《結衣子の部屋》キャンプでも盛況だったね」

 保健室はいつのまにか《結衣子の部屋》と呼ばれてた。
 子供達が何かと相談にやってくる様子を見て誰かが言い出したらしい。どうやら職員の間にまで浸透しているようだ。

「盛況だったねー。ケガでも相談事でもね。思春期に差し掛かった女の子達には悩み事がいっぱいあるのよ」

 何かこれと言ってすごいアドバイスをするわけではない。相談に来る子供達の大半は、話を聞いて欲しいだけなのだ。私はただ聴いてあげるだけ。気持ちを開放すれば、自ずから答えを導き出すことが出来る。
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