【完全版】俺様幼馴染の溺愛包囲網
「俺たちの頃は、前川先生だったからなぁ。相談って、恐れ多くて出来なかったよね。今の子供達は得だよ。結衣子が保健室の先生なんだから。若いし、優しいし。癒しの結衣子先生だもんな」
「そんなことないよ? 私は前川先生にいっぱい話を聞いてもらったんだけどな」
「それは結衣子だけだよ……」

 聖くんが苦笑する。
 前川先生、男子には厳しかったからかな? 
 私にとっては心の師なのに。
 そんなことより――。

「……話は変わるけど、ズバリ、お悩み事があるでしょう?」

 占い師みたいだね、と苦笑いしながら「……なんか聞いてる?」と聖くんが言う。

「雅ちゃん、連絡あったよ。今週末、お見合いするんだって言ってた」

そう。ここからが本題だ。 聖くんがしたかったのはこの話。

「やっぱり……結衣子にも言ってたか。いつ? 連絡あったの――」
「昨日。夜メッセージが来てびっくりして、すぐ電話したわ」
「……」
「ずいぶん前から話があったって。……いいの?」

 長谷川雅(はせがわみやび)ちゃんは、聖くんの同級生で私にとっては先輩。小さい頃から、ピアノ教室が同じだったので、ずっと仲が良かった。

 聖くんと雅ちゃんは高校時代から付き合いだして、今年で12年になる。

 聖くんと亮平も同じバスケ部の先輩と後輩だったため、今でもかなり仲がいい。2人でよく飲みに行っている。私と聖くんが同じ職場になってからは4人で食事に行くことも増えた。

 元バスケ部で長身痩躯の聖くんと、小柄で色白でココアブラウンのゆるふわショートボブがキュートな雅ちゃんは身長差カップル。でも、すごくお似合いなんだ。
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