離婚したはずが、辣腕御曹司は揺るぎない愛でもう一度娶る
 彼はベッドに腰かけると、私の鼻先をちょんとつついた。

「知らない」

 なんとなく恥ずかしくて、ブランケットを掴んでその中に逃げ込む。薄暗い空間でふと自分の左手を見て驚いて、かぶったばかりのブランケットの中から飛び出た。

「こ、これ」

 私は自分の左手を玲司の顔の前につきつけた。

「やっと気がついたのか?」

 少し呆れ顔の彼は、自分の左手を私の前に差し出した。彼の指にも私同様、結婚指輪がはめてあった。

「やっとお互いのあるべき場所にこの指輪を戻すことができてうれしいよ」

 玲司は満足そうだが、私はこのままつけていていいのか不安になる。それを彼は機敏にキャッチしたようだ。

「昔のだと縁起が悪いとか、新しいのが欲しいとかなら、すぐに買いにいこう」

「ちがうの、そうじゃないの」

 私は慌てて否定した。

「会社はもちろん、お義母さんにもまだ話ができてないし。いきなり私が結婚指輪なんてつけていたら、みんな驚かない?」

「驚くかもしれないな」

「でしょ? だからこれはもう少し時間が経ってからでいいかなって」

「ダメだ」

「えっ?」

 いつもは私の意見を尊重してくれる彼なのに、この件は真っ向から否定してきた。

「俺たちが結婚するのは決まっているだから、周囲にばれるのは時間の問題だ。それならいっそもう、なにもかも隠さないほうがいい」

「たしかにそうかなのかもしれないけど……」

 春香や君塚にさえ、私の元夫が玲司だと言うことを伝えていない。発覚したときの混乱を思うと今から頭が痛い。

「俺を説得しようとしても無駄だからな。君塚のこともある。琴葉は俺のもので、俺は琴葉のものだってことを世間に知らしめておかないといやなんだ」

 ここまで彼が言うのはめずらしい。だからこそ、私がなにを言ったところで彼はきっとこの指輪を外すことを許さないだろう。

 それに今思い出したことがある。

「わかった。四年前この指輪を外すとき、すごく悲しかったのを思い出した。だからもうこの指輪はつけたままにしておくね」

「そうしてくれると、安心だ」

 彼が私の額にキスを落とす。

「でもちょっと意外だったな。玲司がそんなにヤキモチ焼きだったなんて」

「琴葉が俺のことを忘れずにいてくれた。だからもう二度と逃がしたくない」

 私はなんだか無性に彼が愛おしくなって、首に手を回して抱きついた。
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