離婚したはずが、辣腕御曹司は揺るぎない愛でもう一度娶る
「どうするかなぁ。でもずっといないと思っていたから、存在するなら確認したいって気持ちはある」

 それはそうだろう。きっとこれまで父親の存在について何度も考えてきたはずだ。だから会いたいと思うのも理解できる。
「そうなんだ、玲司が納得できる結果になるといいね」

「向こうがどういう理由で、接触を図ってきたのかわからないが、俺は俺の思うようにしてみるさ」

 突然の出来事に戸惑っていたけれど、今では気持ちを前向きに持っている。その様子にホッとした。

 玲司がどういう結論を出したとしても、おそらくそれが最善だ。だから私は彼の隣で寄り添っていればいい。

「ごめんな、なんだか面倒なことになって」

「まったくそんなこと思っていないよ。結婚するって決めたときから、私の人生は玲司とともにあるから」

 ちょうどマンションの駐車場に車が止まる。玲司はシートベルトを外すと、私を引き寄せて抱きしめた。

「琴葉が俺の隣にいてくれてよかった」

 彼の声色から、苦悩や戸惑いが伝わってきた。こうやって私がそばにいることで、彼のその重く苦しい気持ちが少しでも和らげばいいと思っていた。

 そして彼は、翌日ひとりで北山家と向かっていった。

 家で待っていた私は、時計とにらめっこしながら彼の帰りを待つ。どうか今日の顔合わせで彼が嫌な思いをしないですむように、と。

 そして疲れ切った顔で帰宅した玲司から聞いた話に私は驚いた。

「認知したいって言われた」

「え、認知?」

 彼とお義父様は初対面で、玲司の存在を昔から知っていたはずない。なぜそんな急な話になったのだろうかと、ソファにふたり並んで座って彼の話を聞く。

「どうやら、北山氏の健康状態に不安があるみたいなんだ。そして去年亡くなった北山夫人との間にはあいにく子どもができなかった。後継者問題が出てそれで色々と探しているうちに、俺を見つけたらしい」

 そんないきさつがあったとは。

 北山グループといえば、日本を代表する大企業のひとつだ。代々北山家出身の人が代表を勤めているらしい。

「だからって、急に?」

「そうだよな。そもそも俺は小比賀玲司としてこれまで育ってきたんだ。急に北山家に、北山グループをって言われても困るんだよな」

 いきなり父親が名乗り出てきたというだけでも驚きなのに、そのうえ大企業を率いろなんて言われてすぐに返事できるわけなどない。
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