離婚したはずが、辣腕御曹司は揺るぎない愛でもう一度娶る
「お義母さんに相談してみたら? きっと心配しているだろうし」

「そうだな、母さんにも聞いてみる。ただ、琴葉はどう思うんだ?」

 私の意見もちゃんと聞いてくれるのが、彼らしい。

「私は、玲司が選んだ道を応援するよ。いつだって一番近くで応援している」

 彼が欲しかった言葉ではないかもしれない。それでもこれが私の素直な気持ちなのだ。

「琴葉は俺のことがよくわかっているな」

「それはもちろん、妻だもの」

 彼の肩に甘えるようにもたれかかる。すると彼の体の力が抜けたのを感じた。それだけで私の存在価値があると思える。

 できることは少ないけれど、彼の力になりたい。私の人生の中心は玲司だった。

 それから数日、あれこれと考えたあと、彼はお義母さんのところに再訪問して相談することになった。

 ふたりのほうがしっかり話ができるだろうと、私は今回同席を辞退した。だからといって気にならないわけじゃない。

 部屋にいるとあれこれ考えてしまいそうだったので、私は気を紛らわせそうと街をぶらぶらしていた。

 お気に入りのカフェでお茶でもしようかと思っていると、ひとりの男性が目の前に現れて驚く。

「こんにちは。小比賀琴葉さんですね」

「はい。あの……たしか北山代表の秘書の方?」

「はい、尾崎(おざき)と申します」

 丁寧に名刺を差し出されてそれを受け取った。名刺から視線を上げて相手の顔を見る。

「残念ながら。今日は主人は一緒ではないのです。あとで連絡させます」

〝帰る〟という連絡がないので、おそらくまだ実家にいるのだろう。

「いいえ、今日は奥様に話があるのです」

「え、私?」

 驚いたけれど、彼はうなずいている。私に話とは……もしかして彼を説得してほしいと言われるのだろうか。

 のんきにそんなふうに思っていた私は、自分の考えがどれほど浅はかだったのかと、そのあとすぐに思い知らされた。

「玲司様と離婚してください」

 尾崎さんから告げられた衝撃のひと言に、私はショックを受けた。

 彼が北山を継ぐとなれば、結婚相手は家柄の釣り合った相手でなければならない。私ではふさわしくないと言われた。

 そのときお義母さんも当時同じ思いをされたのだと気がついた。理解はしていたと言っていたけれど、私と同じように悲しかったに違いない。
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