離婚したはずが、辣腕御曹司は揺るぎない愛でもう一度娶る
第五章 最愛


第五章 最愛

「社長、脚が痛むんですね? 大丈夫ですか、今救急車をーー」

 バッグからスマートフォンを取り出しながら彼に駆け寄った。彼の苦しんでいる姿を見た私は、今にも泣きだしてしまいそうな気持ちに耐える。

「大丈夫だから、電話しまって」

 痛みに顔をゆがませながら、スマートフォンを持つ私の手に手を伸ばし止めようとしている。しかしその顔は苦悶に歪んでおり、そんな表情で大丈夫だなんて言われても信用できない。

「でも、あのときの傷ですよね? まだ完治してなかったんですか?」

 傷のことだけでもちゃんと彼から話を聞いておくべきだったと、いまさらながらに後悔する。

「いや、普段は問題ないんだ。季節の変わり目とか、雨の前とか時々痛む。いつもは薬飲んだら治まるんだけど今日は効きが悪い」

 私を安心させようと、無理に笑顔を浮かべているように見えた。こんなときまで強がらなくてもいいのに。

 悲しさや虚しさ、言いようのないごちゃまぜになった感情が胸の中に渦巻き、私の頬を涙が伝う。それを慌てて手で拭った。

 痛いのも大変なのも私じゃないのに。四年前の自分の軽率な行動が今なお彼を苦しめていると思うと耐えられない。

「なんで琴葉が泣くんだ」

「だって……玲司が」

 自分が苦しいのなら耐えられたのに。眉間にギュッとしわを寄せてなんとか涙をこらえようとする。

「そんな顔するなよ。だから琴葉には足のこと知られたくなかったんだ」

 彼は苦笑いを浮かべて、膝をかばいながら立ち上がろうとする。

 私はそんな彼を支え、ソファに座らせた。
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