離婚したはずが、辣腕御曹司は揺るぎない愛でもう一度娶る

* * *

 膝の痛みが増してきて、過去の記憶の海をただよっていた俺は現実に引き戻された。

 いつもなら痛み止めを飲めば、簡単に引く痛みが、今日はどうしたことか全然軽くなる様子がない。むしろどんどん痛くなってきている。

 これは少しまずいな。

 仕事をここで切りあげて帰ろうと立ち上がった瞬間、バランスを崩してデスクの上に置いてあったものを落としてしまった。

 静かなオフィスに派手な音が響く。しかしすぐに動き出せずに、その場に膝を抱えて座り込んだ。

「……っう」

 痛みに思わず声が漏れた瞬間、社長室のドアがいきなり開いた。飛び込んできたのは琴葉だ。

 またこのタイミングで、なぜ彼女がここにやってくるんだろう。

 でもそんな疑問はどうでもよかった。彼女が手に届く場所にいるということ。その事実だけでも、四年間苦しんだあの頃より
もずっとずっと幸せだった。

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